1. ベトナムで働く外国人労働者に関するDecree 152/2020/ND-CPを改正する2023年9月18日付け政令Decree 70/2023/ND-CP
ベトナムで働く外国人労働者および在ベトナム外国組織・個人のために働くベトナム人労働者の雇用・管理に関する政令Decree 152/2020/ND-CPを改正する2023年9月18日付け政令Decree 70/2023/ND-CPが公布されました。従来のDecree 152/2020/ND-CPから改正されたDecree 70/2023/ND-CPでの新しい主要事項は以下の通りです。
ü 外国人専門家、部門長および技術労働者に関わる条件緩和
2023年9月18日から、外国人専門家は、大学卒業以上または同等で、かつ、外国人労働者がベトナムで働く予定の職位に適した職務経験を3年以上もっておればよくなります。従来のDecree 152/2020/ND-CPが規定していたように予定職種の専門分野での大学卒業証書が求められることは無くなりました。
部門長とは、企業の支店、駐在員事務所または営業拠点の長、あるいは、機関・組織・企業の長から指導・指示を直接受ける機関・組織・企業の一つ以上の分野を直接運営する長を指します。
技術労働者については、ベトナムで働く予定の職位に適した1年以上の訓練を受けており3年以上の経験を持っている必要があります。
発給済みの労働許可証、または、労働許可証発給対象外確認証も、外国人専門家・技術労働者の経験を証明する書類として扱われます。
Decree 70/2023/ND-CPにおける外国人専門家、部門長および技術労働者に関わる条件緩和は、外国人材の招致そして在ベトナム外国企業に対する好ましい環境整備に向けた積極的一歩だと言えるでしょう。
ü 外国人労働者雇用需要報告の期限短縮
外国人労働者の需要報告については、Decree 70/2023/ND-CPでは、その期限が、外国人労働者の雇用予定日から15日以上前までとされており、30日以上前とされていた従来の規定よりも期限が短縮されています。また、職位、役職、労働形態、人数、勤務地に関する需要変更報告も、労働・傷病兵・社会省または労働・傷病兵・社会局へ、外国人労働者の雇用予定日から15日以上前までに(従来は30日以上前)行うことになりました。
ü 外国人労働者雇用への承認書発給管轄当局の変更
Decree 70/2023/ND-CP第1条第2項に基づいて、外国人労働者雇用への承認書または非承認書の発給権限が、地方人民委員会から労働・傷病兵・社会局へ移管されました。新規定によれば、外国人労働者雇用への承認書または非承認書の発給権限を持つ管轄当局は、労働・傷病兵・社会省または労働・傷病兵・社会局です。
ü 労働・傷病兵・社会省(雇用局)電子情報ポータルでの外国人労働者の雇用予定職位へのベトナム人労働者求人募集
2024年1月1日から、外国人労働者の雇用予定職位へのベトナム人労働者求人募集を、労働・傷病兵・社会省(雇用局)の電子情報ポータル、または、各省・中央直轄都市人民委員会議長の決定により設立された雇用サービスセンターの電子情報ポータルで行う必要があります。労働・傷病兵・社会省、または、外国人労働者勤務予定地の労働・傷病兵・社会局へ報告・説明する予定日から15日以上前に求人募集を行います。
外国人労働者の雇用予定職位へのベトナム人労働者が見つからなかった場合に外国人労働者雇用が可能になります。
2. 付加価値税法の改正草案
財政省が、現行の付加価値税法の改正草案を提出しています。改正を検討すべき内容として、以下のような事項が提案されています。
· 税率:
ü 国際慣行に整合させるための輸出サービス、一部商品サービスに関わる課税標準、税率、還付に関連する規定の改正。
ü 付加価値税非課税対象および税率5%対象の縮小、税率判定原則の補足、付加価値税率に関する改正。
· 仕入れVATの控除:
ü 申告書に間違いがあった場合の仕入れVATの修正申告に関する規定の改正。
ü 非現金決済証票の要件が必要となる基準額20百万VNDの適切な額への減額。
· 付加価値税の還付:
ü 一部商品サービスに関わる付加価値税還付規定の改正。
ü 企業再編(企業法の規定に基づく所有者変更、企業形態変更、吸収合併、新設合併、分離、分割、活動停止)の場合に関わる付加価値税還付に関連する各規定の廃止・改正。
付加価値税法改正の提案内容を概観しますと、国際慣行との整合性、手続きの簡素化および租税管理の効率化を目指す改正だと言えます。
3. インボイス、証票に関するDecree 123/2020/ND-CPの改正草案
Decree 123/2020/ND-CPに基づく電子インボイスの使用に伴い、企業側および税務当局側を悩ませる実務的な問題がいくつか生じていました。これを受けて、財政省によるDecree 123/2020/ND-CPの改正草案が政府へ提出されています。注目すべき事項をいくつか挙げますと以下の通りです。
· 第4条第1項が規定するインボイスを発行しなければならない場合が追加されています(原材料・製品・機械・工具・道具を仮輸出・再輸入または仮輸入・再輸出する場合、購入者からの返品を受ける場合、サービス提供を停止または解除する場合、様々な形態での有償または無償での貸出しによる商品出庫あるいは返却に伴う商品受け取り、など)。
· 手数料と同時にサービス料を徴収する場合に発行できる手数料領収書を併せた統合インボイスに関する規定の追加(第4条第9項)。
· 第9条第1項が挙げる輸出貨物に関わるインボイスの発行タイミングに関する規定の追加(これによれば、輸出貨物は、税関書類における税関手続きの完了が確認された時点から24時間以内にインボイスを発行する必要があります)。
· 申告タイミングに関する規定の追加:販売者とってはインボイスの発行時点、購入者にとってはインボイスが規定による内容を充分満たした時点。
· 間違いのあるインボイスの処理に関する規定の追加:購入者が商品の一部を返品する場合、販売者は修正電子インボイスを発行します。販売者は間違いのある電子インボイスを複数発行してしまった場合、複数のインボイスに対して1つの修正インボイスを発行することができます。
Decree 123/2020/ND-CPの改正草案には、電子インボイスの実施に際して企業と税務当局が直面した実務的課題を解決する約束内容が含まれており、法令順守の向上を目的としていることが分かります。
4. 社会保険法の改正草案
社会保険法の改正草案については、基本的には政府も合意しており、2023年7月議会でいくつかの論点が国会で議決されました。2024年社会保険法が国会を通過して施行されるのは2025年1月1日からと見込まれています。2024年社会保険法は、全部で9章、135条項から成ります。
2024年社会保険法の注目すべき新しい事項としては以下のようなものがあります。
ü 月次給付の受給対象者が拡大されます。
ü 年金受給のために必要な保険料納付期間が最低20年から15年へ短縮されます。
ü 社会年金受給開始年齢が80歳から75歳へ早まります。
ü 強制社会保険への加入対象グループが拡大されます。そして、
ü 社会保険料の未納状態に対する多くの対処法、執行策が改正・追加されています。
2024年社会保険法の施行に伴い、下記法令文書は効力を失います。
- 2014年社会保険法。但し、失業保険および健康保険に関する内容に関連する社会保険管理委員会の各規定は、健康保険法および職業法が改正されるまで効力を持ちます。
- 2019年労働法の第219条第1項。
- 労働者の社会保険一括給付受給政策実施に関する2015年6月22日付け国会決議Resolution 93/2015/QH13。
- 2009年高齢者法の第17条第2項。
提案されている改正は、多くの労働者に対する社会的保護の強化に役立つ内容になっています。
5. ネットワーク・セキュリティの分野における行政違反罰を規定する政令草案
この2年間で、ネットワーク・セキュリティおよび個人データ保護の分野での政令が立て続けに2つ公布されました。Decree 53/2022/ND-CPとDecree 13/2023/ND-CPです。この2つの政令実施を担保するために、2023年5月31日、ネットワーク・セキュリティに関する行政罰の政令草案第3案が公安省から公布されました。この政令草案において注目される重要な事項は、以下の通りです。
ü 対象: ベトナムでの個人データ処理に関連する国内外の全ての個人・組織に対して政令が適用されます。
ü 適用範囲: (i) 情報セキュリティの確保、(ii) 個人データの保護、(iii) サイバー攻撃の防御、(iv) ネットワーク・セキュリティ保護活動の展開、および、(v) サイバースペース、情報技術、電子媒体を使用して社会秩序安全に関する法令違反を行う行為の防御、の以上5つの分野に関連する行政違反罰が規定されています。
ü 罰則形態および罰金額: 主要な罰則形態は、警告または罰金です。政令草案第2章で、個人による行政違反行為に対して適用される罰金額が規定されています。組織による同じ違反行為に対しては、個人に対する罰金額の2倍になります。その他、行政違反を行った企業は、個人に対する罰金額の5倍まで罰金を科される可能性があります。
ü 罰則の時効: ネットワーク・セキュリティの分野における行政違反罰の時効は1年です。ネットワーク・セキュリティ製品サービスの製造、売買、輸入、提供、開発、輸出に関する行政違反の場合、行政違反罰の時効は2年になります。
ベトナムでのネットワーク・セキュリティの分野における行政罰の施行細則草案は、ベトナムでのネットワーク・セキュリティおよびデータ保護の強化へ進む重要な一歩です。また、政令草案では、ネットワーク・セキュリティの違反行為を抑止すべく、違反行為および罰金額が具体的に規定されています。ネットワーク・セキュリティの違反行為に対する罰則は、その他行政罰の政令と比較すると比較的重くなっており、違反行為への抑止・防止効果を以て健全なサイバースペース環境を整備する狙いがあると思われます。
6. 2023年の借地料30%減額に関する決定Decision 25/2023/QD-TTg
困難な経済状況における組織、企業および個人への支援策として、2023年10月3日、2023年の借地料減額に関する政府決定が公布されました。2023年11月20日から施行されます。概要は以下の通りです。
- 適用対象:
ü 決定、契約、または、管轄当局から発行された土地使用権証明書、住居および土地に付随するその他資産の所有権証明書に基づいて年次払いの借地の形態で国家から直接に借地をしている組織、単位、企業、世帯、個人が対象です。
ü 土地法の規定に基づいて借地料の減免対象にならない借地者、減免期間が終了している借地者、借地料を現在減額されている借地者に対しても適用されます。
- 減額幅: 2023年の借地料の30%が減額されます。但し、2023年より前の年度の借地料滞納額および延滞金利(もしある場合)は、減額対象となりません。
既に借地料の減額を受けている場合、用地補償額の控除を受けている場合、法令の規定に基づく減額後または控除後の納付額(残っている場合)に対して減額されます。
- 手続き: 決定Decision 25/2023/QD-TTgの施行日から2024年3月31日までの期間に、借地料減額申請書類1部を、借地料徴収管理当局、経済区管理委員会、ハイテク区管理委員会、租税管理法令に基づくその他機関へ(直接、電子的、郵送のいずれかの方法で)提出します。
2024年3月31日の後に申請書類を提出した場合、Decision 25/2023/QD-TTgの規定に基づく借地料減額は適用されません。
2023年の借地料の30%減額に関するDecision 25/2023/QD-TTgは、困難な経済状況にある組織、企業および個人を支援する積極的な政策です。
7. 貸出しによる利子所得に関わる税務総局ガイダンスOfficial Letter 3782/TCT-CS
貸出しによる利子所得に関わる2023年8月25日付けガイダンスが税務総局から公布されました。概要は以下の通りです。
ü 信用機関法に基づいて活動する組織ではない企業が、非継続的な貸出し活動を行っており、他の組織(企業に法人所得税を個別に納付する支店がある場合、その支店も含む)へ、無金利での貸出し、または、市場における同じ期限、同じ規模の貸出しの金利より低い金利での貸出しの場合、租税管理法令の規定により見なし課税の対象となります。
ü 貸出し契約に基づく具体的な金利払い期限がある貸出しの場合、金利を受け取ったか否かに関わらず、利子所得が発生した期の財務収益として認識する必要があります。
8. Decree 44/2023/ND-CPに基づく付加価値税減税に関するビンズオン省税務局Official Letter 23467/CTBDU-TTHT
資産処分および工場賃貸に対して適用されるDecree 44/2023/ND-CPに基づく付加価値税率に関する企業からの問い合わせに対して、2023年10月5日、以下のようなガイダンスがビンズオン省税務局から公布されました。
ü Decree 44/2023/ND-CPの付属書Iにあるリストに製品名が無い機械設備(付加価値税率10%の適用対象となる物品サービスに該当)の資産処分を行う場合、Decree 44/2023/ND-CP 第1条第2項の規定に基づいて、2023年7月1日から2023年12月31日までは、付加価値税率8%が適用されます。
ü 未使用の工場を賃貸する場合、この活動は、Decree 44/2023/ND-CP 第1条第1項の規定による付加価値税減税を受けることはできません。
9. 第3者への契約譲渡に関わる税務取り扱いに関するビンズオン省税務局Official Letter 23468/CTBDU-TTHT
2023年10月5日、契約を第3者へ譲渡した場合の税務取り扱いに関するガイダンスがビンズオン省税務局から公布されました。概要は以下の通りです。
ü サービス契約の履行を第3者へ譲渡することは現行法令では禁止されていません。但し、履行中の契約を第3者へ譲渡する場合、顧客の同意がなければなりません。
ü 自社の指定による第3者への決済形態、または、第3者経由での相手側への銀行決済を委任する形態に基づいて商品売買・サービス提供契約が発生した場合、非現金決済と見なされるためには、これら決済形態が文書による契約書で具体的に規定されており、第3者は法令の規定に基づいて活動している法人または自然人である必要があります。
ü 両者が締結した契約書に基づいて同一の相手先に対して売掛金と同時に買掛金が発生した場合、契約書または契約書附属書に相殺による決済の規定があり、かつ、両者の間で当該相殺決済に関するデータ照合・確認合意書があれば、非現金決済と見なされます。
ü 金融・銀行・証券の分野での債権売却サービスではない第3者への顧客債権の売却が発生した場合、付加価値税率10%でVATインボイスを発行して、規定に従い申告納税する必要があります。
ビンズオン省税務局によるこのOfficial Letterでは、第3者への契約譲渡に関連する税務取り扱いについて明確なガイダンスがされています。第3者への契約譲渡に関わる税務取り扱いの一貫性および透明性を確保すべく、契約譲渡の条件、決済方法、また、付加価値税への影響も明確にされています。
10. 品質検査用サンプル製品の出荷に関わる税務取り扱いに関するビンズオン省税務局Official Letter 23683/CTBDU-TTHT
品質検査用サンプル製品の出荷に関する納税者からの問い合わせに対する回答として、2023年10月10日付けガイダンスがビンズオン省税務局から公布されています。概要は以下の通りです。
ü 事業の特殊性のため品質検査用サンプル製品を出荷する必要がある場合で、(i) 顧客へ送る品質証明書の取得、または、(ii) 顧客から品質に関するクレームがあった際の自主的な検査、を目的とする自主的検査の場合、Decree 123/2020/ND-CP第4条第1項の規定に基づいてインボイスを発行する必要があります。
ü 一方で、法令の規定に基づいて、事業活動に資する目的で料金徴収の無い品質検査をするために管轄当局へサンプル製品を出荷する場合、インボイスには、品質検査に送るサンプル製品の内容、料金徴収が無いことを明記する必要があります。検査に送るまたは自社検査するサンプル製品価額に関わる付加価値税の申告・計算は不要です。
ü 2015年6月22日付け財政省Circular 96/2015/TT-BTC第4条の規定に基づく条件を満たせば、品質検査に送った製品価額は法人所得税を計算する際の損金として認められます。
このOfficial Letterでは、品質検査用サンプル製品の出荷に関連する税務取り扱いが詳細にガイダンスされています。納税者が一般的に持つ疑問点に言及しており、インボイス発行、付加価値税申告、および、損金算入に関わる具体的要件を挙げています。