今回の弊社Grant Thornton Vietnamのニュースレターでは、税務および労務に関わる法律およびガイダンスの最新情報をご案内申し上げます。

1. 2024年6月29日付け国会決議Resolution 142/2024/QH15に基づく付加価値税の税率軽減に関する政令Decree 72/2024/ND-CP

2024年6月30日、政府は、付加価値税の税率軽減を規定する政令Decree 72/2024/ND-CPを交付しました。概要は、以下の通りです。

- 付加価値税の税率軽減対象

税率10%を適用されている商品・サービスのグループに対して付加価値税の税率が軽減されます。但し、Decree 44/2023/ND-CPと同様に一定の商品・サービスのグループは適用対象外となります。

- 付加価値税の税率軽減

+ 控除法により付加価値税の計算をする事業施設は、規定に基づき、商品・サービスに対して付加価値税税率8%が適用されます。

+ 売上高に対する比率により付加価値の計算をする事業施設(事業世帯、個人事業主を含む)は、規定に基づき、付加価値税の税率軽減対象となる商品・サービスに関わるインボイス発行の際に、付加価値税計算の為の比率額が20%軽減されます。

- 手順、手続きは、Decree 44/2023/ND-CPと同様に実施します。

-  販売側が、本政令に基づく軽減措置を実施せずに通常の税率で、または、付加価値税計算の為の通常の比率額でインボイスを発行し申告してしまった場合、販売側および購入額は、インボイスおよび証票に関する法令の規定に基づいて発行済みインボイスに関わる処理を行います。処理後のインボイスに基づいて、販売側は売上付加価値税の修正申告を行い、購入側は仕入れ付加価値税の修正申告(申告をしてしまっている場合)を行います。

本政令は、2024年7月1日から2024年12月31日まで施行されます。これにより付加価値税の税率軽減は2024年12月31日まで延長されることになりました。通常の税率が10%である商品・サービスの殆どは、この税率軽減措置を受けることができます。詳細や実施手続きに関してはDecree 72/2024/ND-CPをご参照下さい。

2. 公務員等の基礎給与額を規定する政令Decree 73/2024/ND-CPおよび労働契約に基づき働く労働者に対する最低賃金額を規定する政令Decree 74/2024/ND-CP

2024年6月30日、政府は、公務員等の基礎給与額を規定するDecree 73/2024/ND-CP、労働契約に基づき働く労働者に対する最低賃金額を規定するDecree 74/2024/ND-CPを交付しました。概要は、以下の通りです。

- 公務員等の新しい基礎給与額は2,340,000 VND/月となりました。

- 4地域各々での新しい最低賃金額は以下のようになりました。

  • 第I地域: 4,680,000 VND/月から4,960,000 VND/月へと280,000 VND上がりました。
  • 第II地域: 4,160,000 VND/月から4,410,000 VND/月へと250,000 VND上がりました。
  • 第III地域: 3,640,000 VND/月から3,860,000 VND/月へと220,000 VND上がりました。
  • 第IV地域: 3,250,000 VND/月から3,450,000 VND/月へと200,000 VND上がりました。

- 新しい時間当たりの最低賃金額は以下のようになりました。

  • 第I地域  22,500 VND(時間額)から23,800 VND(時間額)へ上がりました。
  • 第II地域 20,000 VND(時間額)から21,200 VND(時間額)へ上がりました。
  • 第III地域 17,500 VND(時間額)から18,600 VND(時間額)へ上がりました。
  • 第IV地域 15,600 VND(時間額)から16,600 VND(時間額)へ上がりました。

既に合意済み、誓約済みの労働者に有利な支給内容(教育や職業訓練を受ける必要のある職種や職位の労働者に対しては最低賃金額より7%以上高い給与額を支払う制度。同等の複雑さを伴う通常の労働条件で働く職種や職位の給与額と比較して、重労働・有害業務・危険業務の労働条件を伴う職種や職位で働く労働者へは5%以上、特別な重労働・有害業務・危険業務の動労条件を伴う職種や職位で働く労働者へは7%以上高く支払う制度など)は、両者による別途合意がある場合を除いて、そのまま継続して実施します。

本政令の施行日は2024年7月1日です。

3. 改正法人所得税法の草案(改正)

2024年6月7日、財政省は、改正法人所得税法の草案を政府へ提出しました。主要な改正内容は以下の通りです。

  • 現行法人所得税法の19条項の規定の改正。
  • 納税場所に関する現行法人所得税法を規定する1条項(第12条)の削除。
  • 法人所得税優遇措置の適用原則・対象に関する規定(第12条)、グローバル税源浸食と利益移転の防止規定に基づく追加法人所得税徴収に関する規定(第19条から第23条)6条項の追加。

草案の改正内容は、政府、国会常務委員会そして国会から承認を得た法人所得税改正提案書で提言されている以下の7つの政策主旨に沿っています。

(1)   納税者および法人所得税の課税対象となる益金に関連する規定の精緻化。

(2)    法人所得税が免税される所得に関する規定の精緻化。

(3)   法人所得税課税所得および税額計算方法に関連する規定の精緻化。

(4)    法人所得税の計算に際して損金となる費用および損金とならない費用に関する規定の精緻化。

(5)   一部の対象グループに関わる法人所得税率を新しい要請および状況に適したものに調整する。

(6)   法人所得税優遇措置に関する規定の精緻化。

(7)   グローバル税源浸食と利益移転の防止規定に基づく追加法人所得税を適用する。

改正法人所得税法の施行は2026年1月1日からと見込まれています。

改正法人所得税法草案における改正事項は、基本的には、規定の明確化および法令順守の向上、一定の所得に対する免税、新しい優遇措置、そして、国際標準への整合性をもたらすものと考えられます。

4. 2024年の付加価値税、法人所得税、個人所得税および土地リース料の納付期限延長に関する政令Decree 64/2024/ND-CP

2024年6月17日、政府は、2024年の付加価値税、法人所得税、個人所得税および土地リース料納税期限延長に関する政令Decree 64/2024/ND-CPを交付しました。概要は、以下の通りです。

  • 付加価値税の納付期限延長(輸入付加価値税を除く):

o    2024年5月の付加価値税納付期限:2024年11月20日

o   2024年6月の付加価値税納付期限:2024年12月20日

o    2024年7月の付加価値税納付期限:2024年12月20日

o    2024年8月の付加価値税納付期限:2024年12月20日

o    2024年9月の付加価値税納付期限:2024年12月20日

o    2024年第2四半期の付加価値税納付期限:2024年12月31日

o    2024年第3四半期の付加価値税納付期限:2024年12月31日

  • 2024年度法人所得税の仮納付期限延長: 法人所得税の納付期限日から3カ月延長
  • 2024年に納税額が発生する事業世帯、個人事業主の付加価値税、個人所得税の納付期限延長: 2024年12月30日
  • 土地リース料の納付期限延長:

o   年次払いの土地リース料の形態で管轄当局による決定または管轄当局との契約に基づいて国家から直接に土地のリースを受けている延長を受ける対象者に対して、2024年に発生する土地リース料納付額50%の納付期限が延長されます。

o   延長期限:2024年10月31日から2カ月

  • 2024年の各種税金および土地リース料の納付期限延長が適用される対象者は、2023年の延長規定と同様です。

5. 非関税区外で実施された修理サービスに対する付加価値税率に関する2024年5月21日付け税務総局Official Letter 2155/TCT-CS

2024年5月21日、税務総局は、「輸出加工区外で実施された修理サービスに対して付加価値税率0%が適用されるか」という問い合わせに対して答えるOfficial Letter 2155/TCT-CSを交付しました。概要は、以下の通りです。

Circular 219/2013/TT-BTC第9条の規定によれば、税率0%は、輸出貨物・サービス、外国および非関税区での建設・据付工事、国際輸送、付加価値税の非課税対象である商品・サービスが輸出される場合に対して適用されます。従って、輸出加工企業に対して修理サービスを提供する場合であっても、サービスが(非税関区外に所在する)会社で実施され消費された場合は、付加価値税率0%の適用対象となる条件を満たしません。

6. 活動停止した支店に残った控除しきれていない仕入れ付加価値税額の本店への振替えに関するOfficial Letter 1569/TCT-KK

2024年4月15日、税務総局は、活動を停止した支店に控除可能な付加価値税額が残った場合の本店への振替えに関する問い合わせに対して答えるOfficial Letter 1569/TCT-KKを交付しました。概要は、以下の通りです。

従属単位である支店が、本店所在地とは異なる都市に所在しており、活動を停止し、税務コードの効力も停止させたが、活動停止時点で控除しきれていない仕入れ付加価値税額が残っている場合、付加価値税法の規定に基づく控除条件を満たせば、控除しきれていない仕入れ付加価値税額を本店へ振替えることにより、そのまま本店で申告・控除を行うことができます。

7. 知的所有権の国外への譲渡に関わる付加価値税に関するOfficial Letter  2204/TCT-CS

2024年5月24日、税務総局は、知的所有権の国外への譲渡に関わる付加価値税に関する問い合わせに対して答えるOfficial Letter 2204/TCT-CSを交付しました。概要は、以下の通りです。

  • 法令の規定に基づいてソフトウェア製品、ソフトウェア・サービスを輸出する場合、Circular 219/2013/TT-BTC第9条の規定による条件を満たせば、付加価値税率0%の適用対象となります。
  • 但し、知的所有権を国外へ譲渡する場合は、Circular 130/2016/TT-BTC第1条第2項の規定により付加価値税率0%の適用対象にはなりません。
  • 要するに、ソフトウェア製品、ソフトウェア・サービスを輸出する会社は、付加価値税率0%の適用を受けますが、知的所有権の国外への譲渡は付加価値税の課税対象となります。この区別は、企業にとって税務面での懸念要素となるかもしれません。

8. 法人所得税優遇措置の対象となる為替差額による所得に関するOfficial Letter 1794/TCT-CS

2024年5月2日、税務総局は、為替差額による所得に関わる法人所得税に関する問い合わせに対して答えるOfficial Letter 1794/TCT-CSを交付しました。概要は、以下の通りです。

  • 期中に生じた為替差額は、企業による主要な事業活動の収益、費用に直接関連する場合、事業活動の収益、費用として計算します。
  • 投資優遇分野に関する条件を満たして優遇措置を受ける投資プロジェクトを持つ場合、投資優遇分野の収益、費用に直接関連する為替差額から生じる所得も優遇措置を受けます(Circular 96/2015/TT-BTC第10条第2項)。

上記ガイダンスは、為替変動に関わる税務処理の最適化の方法を明確にしてくれています。これにより、税務処理の最適化のみならずキャッシュフローの予測もより正確かつ効果的に行うことが可能になります。